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  • 2026/03/09(月)
  • 農業を志す方々へ ー蔵原 希さん

自分のやりたいことの軸・目的を一つ持っておく

薬糧開発株式会社 蔵原 希(くらはら のぞみ)さん

 

 

 

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埼玉県羽生市にある薬糧開発株式会社へ就職就農された蔵原さん。

埼玉県農業大学校で農業を学び、2024年に有機農業に取り組む現在の会社へ入社。

埼玉県にて農業界で活躍する女性にお話を伺うシリーズ 第六弾!

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Q.就農されたきっかけや経緯について教えてください

もともと大学では観光を学んでいて、就職先は観光業へ!というイメージを持っていたのですが、就活時期がちょうどコロナ禍と重なり、観光業界への道を断念せざるを得ませんでした。

「じゃあ、何なら絶対になくならないか?」と考えたときに行き着いたのが「食」だったんです。それもあり、新卒では世界の食品を扱う小売業「カルディ」に就職しました。

カルディには、生産者のこだわりの品がたくさんあり、それらを接客しながら販売することにやりがいを感じましたが、一方で商品一つひとつがどのように生産されているのかを深く理解できないまま販売することに少しずつ物足りなさを感じるようになりました。さらに、店頭では季節に合わせた商品を扱っていましたが、実際に自分がいるのは空も見えない店舗内で、季節を感じることができない環境であることにも違和感を覚えるようになりました。夜型の仕事であることも含め、このまま一生ここで働いていく、ということが段々とイメージできなくなっていったんです。そんなとき、たまたま、社内の研修で自社のワイン用ブドウ畑に訪れ、食を生み出す「生産」の仕事の楽しさを知ってしまい、農業への思いが日に日に強くなっていきました。

そこから、休日に農業ボランティアに参加したり、インターネットで農業のことを調べたりするようになり、ある日、埼玉県の女性農家さんのPodcastで「埼玉県農業大学校」の存在を知りました。その女性農家さんは、さいたま市内で有機農家として活躍されているのですが、埼玉県農業大学校で有機農業を学んでから就農をしたというお話をされていて、「これだ!」と思ったんです。そして、2023年に農業大学校に入学し、1年制の有機農業専攻で農業を学びました。学ぶうちに「有機農業」の魅力にすっかりハマり、卒業後も有機農業をやっていきたいと思うようになりました。

そして有機農業に取り組む今の会社と出会い、就職して就農をしました。

 

Q.農業大学校卒業後、なぜ自立就農ではなく、就職就農を選んだんですか?

同期の多くは自立就農を目指しましたが、私は社会人としての経験が少なく、一人でやっていく資金力や農地のあてもありませんでしたので、まずは就職就農から始める道を選びました。といいましても、住んでいるエリアから通える有機農業の求人がなかなか見つからず、埼玉県加須市役所の農政課へ相談に行ったんです。そこで今の会社が有機農業をやっていると教えてもらい、応募しました。

今の会社は食を通じて健康を提供することを目的としており、サプリメント事業がメインの事業なのですが、カフェやデリも展開しています。私が勤める農場で生産した野菜は、お惣菜用にセントラルキッチンで調理される他、惣菜店舗でそのまま野菜販売もしています。

自分達で育てた野菜がお客様に届けられるまで見えるのでやりがいを感じています。

 

 

Q.前職のときに農業への思いが強くなって、農業の道を志したと伺いましたが、実際に農業を仕事にされてみて今はどのように感じていらっしゃいますか?

やって良かったと思っています。

現場で季節を感じながら体を動かすことが私にはやっぱり向いているんだなと思います。夜型から朝方に完全に切り替わり、初めは慣れるのに少し大変でしたが、それも良かったと思います。

小売業の頃は「商品が売れた」という結果が楽しみでしたが、今は「芽が出た!」「虫がついてる…」といった日々のちょっとした変化を見つけられることがとても面白いですね。

例えば、今年の1月〜2月の極寒期。当社の育苗ハウスでビニールトンネルを1枚増やしてみたところ、発芽率が昨年よりも上がりました。「少しの工夫がこんなに植物に影響を与えるんだ!」という発見は、何度経験しても面白いです。今までやっていなかった緑肥の栽培を始めたり、栽培方法をちょっと変えてみたり。農業は工夫する余地がいろいろあって面白いですね。

 

Q.農業大学校で学んだことはどのように活かされていますか?

農業大学校では週2~3日の実習がありましたが、入社後の即戦力になれるかと言えば、正直難しいです(笑)。もちろん、知識がある状態なので、全くの未経験で始めるよりはそれぞれの仕事に就いての理解は早いと思います。でも実務経験は無いのと同じですので、入社後は、先輩社員から基礎的な部分からしっかりと教えていただきながら経験を積みました。

 

でも、農業大学校に行って本当によかったと思うポイントが3つあります。

まずは自分の進みたい農業の方向が定まったことです。

有機農業の考え方は、土の中の微生物など多様性を大事にしていて、とても奥が深くて学んでも学んでも学び足りないんですよね。それを大変だと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、ある先進農家のもとで研修をさせていただいたときに、ひたすら草取り作業が続くほど大変でも有機農業を面白い、もっと学びたいと感じていらっしゃる代表の姿を目の当たりにし、「何十年やっても学び足りないほど面白いんだ」と肌で感じたのは大きな収穫でした。

 

また、栽培知識だけでなく、どうやって売るか?を学ぶマーケティングの授業があったことも良かった点です。

農業大学校では、栽培から販売までを自由に計画してチャレンジできる課外活動があり、私は年末のタイミングに向けて“春菊”を栽培して販売しました。ただ作るだけでなく、どのように販売するか、農業を経営的な目線で考えることができたのは、とても良い経験でした。

このときに、栽培だけでなく将来的には「経営」にも携わりたいという目標ができました。

 

そして、最後の一つ、これが1番大きいですが、同じ志をもつ18名のクラスメイトと出会えたことです。

大学校で出会った仲間達とは、卒業後も関係が続いていて、年に何回か集まって情報交換をしています。独立就農したクラスメイトの畑を見に行かせてもらったこともあり、刺激を受けました。

大学校に入らず、いきなり農家さんのところへ研修に行く手もありますが、こういう繋がりができることは、大学校に行く何よりのメリットですね。

 

 

Q.将来的には独立をお考えなんですね

現在もいい会社で、いい仕事をさせていただいていると感じていますが、将来的にはパートナーと独立就農することを目指しています。ただ作るだけでなく、どうやって生計を立てていくかなど、農業経営にもチャレンジしたいという思いが強くあります。

私が目指しているのは、自分の身近の人・周囲の人の居場所になれるような畑です。

 

前職時代にボランティアに行った先では、一般就労が厳しいような重度の障害を抱えている人たちが、毎日通って農作業をされていました。そこで初めて、農業ってこういう存在意義もあるんだと思いました。なのでいつか自分の農場を持ったら、私も誰かの支えや居場所になれる場所にできたら、と考えています。

 

Q.最後に、これから農業を始めていきたいと思っている方へアドバイスをお願いします

私と同じく、雇用就農を目指される方でしたら、入社前に気になることをしっかり聞いて、調べられることは調べて、不安を解消してから入社されることをお勧めします。でも、実際に働いてみないとわからないことって結構多いんですよね、人間関係とか。

いくら調べて入社しても、実際はイメージと違った・・ということは起こってしまうかもしれません。それ自体は仕方ないことなのですが、「何をやりたいか」「何にこだわりたいのか」という、目的や軸をしっかり持ったうえで入社すれば後悔しないのではないでしょうか。私の場合だとその軸が有機農業で将来的に独立を目指す、ということになりますが、そういうものは一つ持っておくといいと思います。

 

もし、農業未経験の方であれば、市民農園などを借りて何でもいいので実際に育ててみることをお勧めしたいです。本格的に生産するためじゃなくて、一つの経験として、私は細かい作業が苦手なんだな・葉物野菜の細かい作業が得意なんだな、など、自分の向き・不向きを知ることができるはずです。農業に関心があれば、きっとわからないことやうまくいかないことの原因を調べたりするようになり、農業のことをもっと知りたいという気持ちが強くなっていくのではないでしょうか。

私自身は市民農園を探しきれなかったのでいきなり農業大学校に飛び込んでしまいましたが、近くに市民農園がある方でしたら是非はじめの一歩に始めてみてください。

 

 

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